海外のプログラミング教育事情~イギリス編~
海外のプログラミング教育事情 ~イギリス編~
2020年度から小学生のプログラミング教育の必修化が始まるということで、昨年は「プログラミング教育元年」ともいわれた日本。プログラミング教育に関連したワークショップや体験講座が開かれたり、教材や関連本が発売されたりと必修化に向けた動きが少しずつ見えてきました。
急速な情報化の発展に伴い、世界でもITを取り入れた教育からもう一歩踏み込んだ形で初等教育からプログラミング教育を導入していこうとする動きが始まっています。 その中でも、今回は充実したIT教育環境が整っているといわれるイギリスの取り組みについてご紹介します。
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イギリスは政策としてプログラミング教育に力を入れています。公立小学校のカリキュラムが大きく改革された2014年より5歳から16歳までのプログラミング教育が義務化されました。義務教育でのプログラミング教育の全国導入は、G20諸国の中では初めてです。
イギリスのプログラミング教育に至るまでのIT教育の取り組みは20年以上前に遡ります。
1995年に初等・中等教育段階の必修の独立教科として「IT」が設置されました。1999年には教科名を「ICT」と変更し、主としてコンピュータの操作やアプリケーションの使い方を学習していました。
転機が訪れたのは、2010年頃。政府や産業界から、文章作成ソフトや表計算ソフトなどは使うことはできても、コンピュータで何ができるのかということを学ぶ教科になっていないのではないかと指摘を受けます。
そこで、2012年、教育省は「ICT」教科の学習内容の見直しを図り、教科名も「Computing」に変更。2014年の初等教育の必修化につながっていきます。
「Computing」では、今までのようなコンピュータの操作など単純に「使う」ことから、問題を解くための手順を考えたり、プログラミング言語を「学習」とするという踏み込んだ学習内容になりました。学習内容についてはかなり試行錯誤があったようですが、プログラミング言語の教育から、情報リテラシーまで幅広い内容がカバーされています。
【Computingの内容構成】
コンピュータを使って物事を考えることは、これからますます技術が進化するデジタル社会に効果的に参加するために必要な能力だと位置づけています。
プログラミングを学ぶことは、コンピュータを使って創造性を育み、自分の考えを表現することができること。「責任ある有能で自信を持った創造的なICT ユーザー」になってもらうことを期待しているようです。
「Computing」が必修化となって今年で3年。教員不足は当初からの課題となっていましたが、そろそろプログラミング教育そのものの効果や新たな課題、これからの方向性などが見え始めてくるのではないでしょうか。その動向が注目されるところです。
参考資料
文部科学省平成 26 年度・情報教育指導力向上支援事業
『諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究』
http://jouhouka.mext.go.jp/school/pdf/programming_syogaikoku_houkokusyo.pdf