海外のプログラミング教育事情~フィンランド編~
海外のプログラミング教育事情 ~フィンランド編~
国際学習到達度調査(PISA)で常に上位にランクインする教育先進国として注目されているフィンランド。義務教育は、子どもが7歳になる年から始まり、9年間で修了します。すべての子どもたちに対し、授業料、教材、文房具、毎日の給食に至るまで無償で提供されていて、平等な教育を受けられるという大変恵まれた教育環境が整えられています。
プログラミング教育は2016年8月より、10年に1度の教育カリキュラム改正が実施されるタイミングで義務教育に導入されることになりました。 世界でも高い教育水準を維持しているフィンランドの教育制度の中で、プログラミングはどのように子どもたちの授業に取り込まれているのでしょうか。
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フィンランドは国際競争力を保ち続けるために、1990年代からITを積極的に活用しています。
サウリ・ニーニスト大統領もプログラミングは「未来の市民の一般知識」と言うように、デジタル社会の未来では欠かせない知識と位置づけています。
プログラミング教育を受けることで、すべての子どもたちが平等に身の回りの機器を動かしているプログラミングの仕組みを知り、その背景にある論理的な考え方(ロジカルシンキング)を身につけることを目的としています。
そしてプログラミング教育をきっかけに、さらに興味をもってプログラミングの知識を高めていけば、将来的には新たな利益を生みだすIT企業やサービスを立ち上げることができる人材の育成・輩出につながることにも期待しているようです。
人口がわずか540万人のフィンランドにとって、プログラミング教育は国家の生き残りをかけた先行投資ともいえるのです。(※参考:東京都の人口は2016年7月時点で1362万人)
プログラミング教育の義務教育化が決まってからは、フィンランド全土でプログラミング熱が高まりました。学童保育で開催されるプログラミング講座に人気が集まったり、テレビの国営放送で子どもたちがゲームを自作する番組が始まりました。特にIT企業が主催する親子プログラミング教室が盛況のようです。
プログラミングは動画やゲームのように受け身ではなく、子どもたちがコマンド(コンピュータに実行させるための命令文)を使ったらどのように動くのかということを学びます。最初はプログラミングを学ぶことを消極的に思ったり、不安に思っていた親たちも「これなら能動的で創造力を高めることができる」と好評を博しました。
実際の義務教育の学習では、「プログラミング」という独立した科目はなく、すべての科目に横断的に取り入れられています。算数での導入が多くなりますが、音楽や体育といった教科にも組み込まれています。
【フィンランドでのプログラミング教育の流れ】
1~2年生では、遊びを通じて他の学習者に明確な指示を与える練習をすることで論理的な思考を養います。3~6年生で直感的に操作できる「scratch」などを使ってゲームや動画を作る経験をし、9年生が修了するまでにプログラミング言語を最低1つは学ぶところに到達するようなカリキュラムとなっています。
先生は進行役として、生徒たちが自由に学び、失敗し、考えて目的に到達することができる環境を整えるガイドに徹します。
既存の教科でプログラミングの学習が組み込まれているので、授業時間そのものが増えるわけではありません。そのためタイトなカリキュラムにならず、字の書き方や計算と同じようにゆっくりと時間をかけて学ぶことが特長といえるでしょう。思考力や表現力を重視する「子供目線」を大切にした本来のフィンランド教育の強みが生かされていきそうです。
これからフィンランド式プログラミング教育はどのような成果を生み出すのでしょうか。
義務教育化が始まる前の動きは日本の本格的な導入に向けてのヒントにもなりそうです。
参考資料
文部科学省平成 26 年度・情報教育指導力向上支援事業
『諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究』
http://jouhouka.mext.go.jp/school/pdf/programming_syogaikoku_houkokusyo.pdf
フィンランド大使館 フィンランドの学校がこう変わる!Q&A10選
http://www.finland.or.jp/public/default.aspx?contentid=350772
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https://edu.gramin.jp/post/2017012401/