海外のプログラミング教育事情
およその数をプログラミングで表現
~相模原市 全小学校の4年生が体験~
2014年より初等教育でのプログラミング教育が義務化されたイギリス。 必修化に至るまでの経緯や学習内容は、このページでも紹介しました。
義務化実施から3年が経った2017年、現存する最古の科学学会であるロンドン王立協会(Royal Society)が「After the Reboot : Computing Education in UK Schools」という論文を発表しました。
まず課題となったのが、義務教育の入口の段階ではすべての児童がコンピューティングを学んでいるのに、ほとんどの生徒がSecondary schoolの途中でコンピューティングを学ぶ選択をしないということです。義務教育(5歳~16歳)を修了するときに受験するGCSEという試験で、「Computing」を選択している生徒が受験者全体の11%にとどまっています。
この理由のひとつとして挙げられているのは、高等教育になるとGCSEコンピューティングの授業を受けられる学校が7割程度にとどまるため、コンピューティングの授業自体を受けることが難しくなってしまうということでした。また、コンピューティングという科目自体に興味がないと回答する生徒も多くいる現実も明らかになりました。
そして義務教育実施時から懸念事項となっていた教員不足も慢性化しているようです。 コンピューティングを教えている教員の多くが、特に高度なコンピューティングで教えている内容に自信がなく、生徒と一緒に学びながら授業をしている状況が一般化しているようです。教員育成の取り組みも様々な要因で難航していることが伺えます。
一方で2017年9月に日本で行われたICT CONECT21主催のシンポジウムでは、イギリスのある調査結果が紹介されました。教員はプログラミング教育で「Computational Thinking」を授業で取り入れることによって、児童の 問題解決力や算数力 は特に高い効果があることを実感しているようです。この「問題を解決する力」に向けて子どもたちが話し合って結論を出す過程がプログラミング教育ではとても重要で、どの教科にも必要な力だと言います。
現在、必修化に向けて思考錯誤しながら授業に落とし込むため様々な取り組みをし始めた日本でも環境整備や教員の育成などが課題となっています。 イギリスで直面しているプログラミング教育を通じて子どもたちに身に着けてもらいたい力を、継続的に学習できるシステムを作りあげていくことの難しさを踏まえつつ、各自治体や学校の様々な取り組みを共有して結集することが重要になっていきそうです。
参考URL
イングランドのコンピューティング必修化に学ぶ――実施から3年で見えた課題
https://edtechzine.jp/article/detail/547
Royal Society 『After the reboot:computing education in UK schools』:原文
https://royalsociety.org/~/media/policy/projects/computing-education/computing-education-report.pdf
英国の実例から小学校低学年のプログラミング教育の可能性を探るイベント
~「Computing」授業の内容と効果・課題・ツール群の紹介まで~
https://www.watch.impress.co.jp/kodomo_it/news/1094306.html